【体験記】家族持ちが社会人博士を目指す 〜出願から入試〜

さて前回は研究計画の作成から教授の面談までについてお話ししました。

研究室が決まったため、出願を行いました。ただ私の場合は、コロナ元年である2020年であったため、かなり特殊な受験環境であったことをご承知おきください。

ここでは出願準備から入試の流れまででご紹介します。

出願準備

大学の出願では多くの書類が必要となります。ここでは多くの大学で必要となるであろう書類についてご紹介していきます。

書類

社会人が大学院に出願するにあたり、必要となるのは主に下記のような書類です。

  • 願書・・・社会人かどうかは関係ありません。全員に共通し必要となります。
  • 修士論文・概要・・・博士出願の場合だけ該当。口頭試問などでも使われます。
  • 業績をまとめた資料・・・社会人の場合、会社での実績などがどれだけあるかと、やってきたことの研究との関連性などが、ある程度選抜の判断基準にされていたように思われます。博士学生は修士学生と異なり、研究室や大学側もある程度あらかじめ戦力という観点で選定するので、どう自分がその領域において研究交換できるかをアピールする必要があるでしょう。
  • 所属する企業の上長等の許可証・・・社会人博士などの場合のみに該当します。最近では博士課程の敷居を下げる目的で、会社からの許可証提出を必要としない大学もあります。私の場合は上司や会社に相談した上で進めたので提出しました。
  • TOEFL等英語の成績証明書・・・ほとんどの大学ではTOEFLのスコアで応募者の英語力をはかります。試験としてTOEFLを行う大学もありますし、すでに持っているTOEFLスコアを提出すれば良いところもあります。最近は後者がほとんどのようです。

入試について

学力試験は研究科によって異なるので、今回は最終面接にあたる研究テーマプレゼンテーションについてご説明します。

評価ポイント

研究テーマのおもしろさ

やはりなんといっても、研究テーマの魅力が一つの大きな基準になるではないかと考えられます。その研究を成し遂げることで、世の中をどう変えていけるかというシンプルな価値が、博士進学での重要な判断基準ではないかなとおもいます。

具体性

研究計画はある程度具体性を持っている必要があります。少なくとも面接の時に話す教授達、審査官と適切な議論ができるレベルまで具体化されている必要があるでしょう。議論できるレベルというのは、そのテーマに対して、教授達から建設的な反論をもらえたり指摘をもらえるレベル、と私の場合は考えています。たとえば、「VRの研究をしたい」といっても議論はできませんし、「VRでアバターの研究をしたい」と言っても議論はできません。範囲がまだだいぶ広く、ポジションが不明確で議論できるほどに具体化されていないからです。

これはすなわち、関連研究と自分の研究の位置付けも練られてないことなります。この状況だと自分の研究の戦略力を適切に伝えられていないと言えるでしょう。

実現性

研究の評価基準として、そのアイディアが本当にできるもなのか、という実現性の軸も挙げられます。絵に描いた餅で終わってしまっては行けません。研究テーマとは、テーマ自体の面白さと実現性のバランスがとれた、良い問いを立てることなのではないかと考えられます。この問いの設計で研究の価値の大部分は決まってしまうのではないでしょうか。

遂行力を持っているか

応募した研究テーマについて、その人が遂行できる能力を持っているか、という点も判断の対象となります。特に博士課程は修士と異なり戦力として見られるので、ラボや大学にとって戦力として期待できるかどうかは重要な判断ポイントとなると思います。必ずしも面接だけで判断されることではないと思いますが、下記のようなものが遂行力の判断になるのではないでしょうか。

  • プレゼンテーション能力・ロジカルシンキング
  • プレゼンを裏付ける該当領域の知識・具体的な実現手法案
  • 過去の研究実績、会社での実績
  • 英語力

入試時の研究テーマはそのまま博士のテーマになる?

皆さんがよく疑問に思われる問いですが、私の感覚だと、ほとんどが入学後の教授とのミーティングを経て変わっていくのではないかと考えております。抜本的に変わるものもあれば、少し方向性を練り直すパターン、様々です。入試時のテーマが修正なしでそのまま研究テーマになる、ということはほとんどあり得ないのではないかと思います。

だからと言って自分が全く興味を持てない研究テーマを持っていくのも危険です。入試で研究テーマについてプレゼンをする・あるいはさせられる目的は大学・ラボと学生がwin-winである環境を目指すためとも言えます。ある意味でお見合いに近いのかもしれません。応募者の皆さんもその研究室が、自分の研究のための手段として有用なのか、を見極める必要があると言えるでしょう。

 

<研究プレゼンの目的>

  • 応募者に基本的な研究能力が備わっているか。
  • 研究室にとってその応募者を入れることにメリットがあるか。戦力になるか。
  • 研究室が応募者のやりたい方向性についてサポートできるか。

 

いかがでしょう。少しでも入試やプレゼンについてイメージと持てたら幸いです。今後は社会人博士の入学後の生活について掲載していきます。

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